確実な行動と成果を生み出しやすくする「SMART 100」による良質な"目標設定"の立て方 (2)
前回の記事「 確実な行動と成果を生み出しやすくする「SMART 100」による良質な"目標設定"の立て方 (1) 」では、挫折しやすい目標を、確実な行動につながりやすい良質な"目標設定"へ進化させる フレームワーク 「 SMART 100 」 を紹介しました。
今回は、この SMART 100 フレームワークの「具体的な使い方」 や 「よくない目標設定例」、「よい目標設定例」について、ご案内していきます。
前回の記事を、ご覧になっていない方は、こちらをご覧ください。
あなた や 組織、チームで設定・指示した行動は、SMART 100 に準拠 していますか?
代表的な「 要注意キーワード 」を設定・発見した時は、見直すタイミングかもしれません。
「 SMART 100 」フレームワーク「具体的な使い方」
このフレームワークは、意外とカンタンに利用できます。
大まかな流れは以下の通り 5ステップ です。
- 実現したい「 目標 (≠行動)」を決める (目標と行動は明確に分離)
- 目標の実現に直結する「具体的な行動」を、SMART 100 形式で記載
- 週次 または 日次の行動スケジュール帳へ反映
- 行動が実施できたかどうかを確認・振り返りするタイミングをあらかじめ決定
- 設定した行動を開始し、内容や量を調整しながら行動を継続し習慣化
では、SMART 100 の具体的な活用例(ある企業Aからの相談内容)を挙げ、どのように検討・設定していくのか、みなさんの組織や個人目標を思い描きながら考えていきましょう。
【 ある企業Aの相談内容:課題 】
同じ製品やサービスを担当している同一事業部の組織であるにも変わらず、顧客や地域により担当や地域が分散化されており、同じ組織内での「情報共有」や「コラボレーション」が上手く機能せずに、営業職や技術職が、非効率な重複作業をして疲弊、提案品質も劣化しているケースが多発して困っています。
本来ならば、成果物や気づき、ナレッジを蓄積し可視化し、再活用する姿が望ましいのですが、目先の営業目標や日々の活動に忙殺されてしまい、チームや組織として必要な活動の優先度やモチベーションが低下してしまい、各社員やスタッフがこのような情報共有に非協力的(ごく一部の社員のみ実施)です。
中には、成果物や情報を共有せずに自身でのみ保持する事で、(リストラなどされないように)自分の役割や立場の優位性、ポジションの確保をしている社員もいます。
経営トップや管理職により、指示を出しても「やらされ感」が満載で、ほとんど実施しないといった状態になった事もあるような「自転車操業 状態」をなんとかしたい。
【 ある企業Aの相談内容:目標 】
課題山積ではあるが、まずは「 情報共有やコラボレーションを積極的に実施する風土を醸成する為のチーム育成 」をなんとかしたい
よくない目標設定例
上記のような状況は、企業Aに関わらず、どの組織でも発生しがちであり 頻繁に ご相談頂く課題です。このような課題に対して、私達が陥りがちな目標設定の罠(ワナ)から見ていきましょう。
【 最初に設定されていた 目標 と 行動 】
当初、企業Aの担当者は、上記目標を達成を目指し、以下のように設定されていました。
「 我が事業部では、競争力強化や生産性・品質の向上を目的として成果物の共有 および再活用を随時、適切に実施する事。」
【 SMART 100 による、行動の妥当性Check ・・・ 初回 】
上記の企業Aの担当者が当初設定した「行動」が適切かどうか、SMART 100 に当てはめて考えてみましょう。
「 我が事業部では、競争力強化や生産性・品質の向上を目的として成果物の共有 および再活用を随時、適切に実施する事。」
1. Specific (具体的 かつ あいまいな表現の徹底排除)
⇒ × 具体的ではない。(例: 何が「適切」かは人によって個人差が激しい)
2. Measurable (測定・計測可能)
⇒ × 測定不能 (例: 随時とは、毎日? 毎週? 月に2回?、確認しようがない)
3. Attainable (達成可能)
⇒ × 何をもって達成したと言えるのか、指示をした人も、現場も不明確
4. Realistic (現実的、特に初期は無謀な内容や量にならないように)
⇒ × 具体的な行動に分解されていない為、現実的かどうか判断不能
5. Traceable (第3者も、トレース・管理可能:上司・部下・同僚・家族・知人等)
⇒ × 第3者も、具体的に認識できる行動に表現されていなくトレース不可
6. 100 (新人・初心者100人でも、バラつきなく完全に同じ行動ができる)
⇒ × 100人とも、異なる行動になってしまう。
【 SMART 100 による、行動の妥当性Check ・・・ 担当者による改訂(1) 】
その後、SMART 100 の説明を簡単に担当者の方々に行いました。そして「目標」と「行動」を分離して、記載頂くようお願いした直後に修正頂いた目標が以下の改訂版(1回目)です。
■ 改訂前
「 我が事業部では、競争力強化や生産性・品質の向上を目的として成果物の共有 および再活用を随時、適切に実施する事。 」
■ 改訂後 (1回目) ・・・ 未完成
目標:「 我が事業部は、競争力強化や生産性・品質の向上を実現する 」
行動1:「 提案活動を通して作成した成果物(提案書、技術資料、プレゼン資料、商材説明資料、等)の共有を、毎週 金曜日の10:00amまでに、1人 1件以上、システムに登録する 」
行動2:「 チームメンバーが共有した資料や情報に対して、週に1件以上、フィードバックする事 」
上記「行動1」、「行動2」は、一見 SMART 100 に準拠しているように見えますが実は不完全(罠:ワナあり)です。
不完全かどうかを、簡単にチェックする役割を担っているのが、SMART 100 の 「 100 (新人・初心者100人でも、バラつきなく完全に同じ行動ができる) 」の部分です。
「行動1」のバラつき例 ・・・ " システムに登録 "
・新人Aくん: そうか、ナレッジ共有システムX に 登録すればいいんだね
・新人Bくん: そうか、新設されたナレッジ共有システムY に 登録すればいいんだね
・新人Cさん: メールに添付してチームで共有すればいいのかな?
・新人Dさん :「システム」って何?
「行動2」の行動バラつき例 ・・・ " フィードバックする事 "
・新人Eくん: なるほど、合う機会があれば、声かけて話しておけばいいのかな
・新人Fくん: なるほど、成果物を共有したシステムのコメント機能を使えばいいね
・新人Gさん: 先輩方に聞いても、みんな言ってる事違うし何すればいいの?
・新人Hさん:「フィードバック」って、そもそも何する事?
このようなバラつきが発生する行動設定が、実際の現場の施策や指示、マニュアル等では多発していますので、みなさまの組織やチームでの施策や設定内容を見直してみる事をお勧めいたします。
よい目標設定例
では、最後に SMART 100 に準拠した正しい設定例を見てみましょう。
【SMART 100 による、行動の妥当性Check ・・・ 担当者による改訂(2) 】
目標:「 我が事業部は、競争力強化や生産性・品質の向上を実現する 」
行動1:「 提案活動を通して作成した成果物(提案書、技術資料、プレゼン資料、商材説明資料、等)の共有を、毎週 金曜日の10:00amまでに、1人 1件以上、新ナレッジ共有システムY ( http://xxxx.xxx.xxx ) に登録する 」
行動2:「 チームメンバーが共有した資料や情報に対して、週に1件以上、新ナレッジ共有システムY ( http://xxxx.xxx.xxx ) のコメント機能を利用して、フィードバック(よかった点、こうすればもっとよくなる、xxx案件で活用できた、この資料のお蔭でxx時間短縮できた等のコメント)する事 」
行動設定で重要な事は、「 自分の常識は、かならずしも他人の常識ではない 」という事です。
対象者の経験値や知識レベルによっては、上記の行動内容よりも、より具体的に噛み砕いて行動分解し設定する必要もある配慮も必要です。
次回は、『 7秒で完成! 新しい行動を自分にものにする、お手軽フレームワーク 「 4-Lines 」活用のすすめ 』を、ご紹介予定です。
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